「ドローン」をどう使おうか。カメラ道楽部屋(15)

 人様よりはちょっとだけ新しいもの好きな window tribe です。

 ドローンを買って、かれこれ2年が経とうとしていますが、前回は初心者ですので「落ちたらどうしようか」と心配しながらもドローンを飛ばすところまで書きました。

 最近の「ポツンと一軒家」に代表されるテレビ番組や映画などではドローンからと思われる動画シーンが随所に使用されています。しかし私の周りでは動画よりは静止画を扱う事が多いので、静止画で構図を考えながらの撮影が主になっています。今回は実際に飛ばして写真を撮ったりして、私なりの活用方法について書いてみました。


 私が住んでいるのは東広島市といって、広島大学の統合移転に始まり、広島市のベッドタウンとしての人口増と工業の発展とで全国的にも成長率が注目されている都市ですが、市域が満遍なく発達しているわけではなく、伸びているエリアの周辺は昔ながらの田舎な部分も多く残っています。

 ドローンを飛ばすには点在する人口密集地上空ではドローンを飛ばせませんが、「田舎な部分」なら飛ばせることが出来る条件に合致する場所もあります。もし私が都会の広島市在住だったら、宝の持ち腐れになるのでドローンは買わなかったと思います


地上からは見えない光景

 まず、何はおいてもやってみたかったのは広島県最大の前方後円墳の三ツ城古墳を上から見ることです。この辺りは人口密集地からぽつんと外れていて、飛ばしてみましたが徐々に鍵穴状の形が見えてきて感動しました。このように鳥になった気持ちになれるのがドローンの醍醐味です。


 人口密集地は駅周辺が多いのですが、西条駅周辺の人口密集地を外れたエリアの安芸国分寺歴史公園の芝生から斜めに鳥瞰してみました。

 西条駅北側に当たる部分は昔ながらの入り組んだ路地と区画整理が入り交じりながらも人々が暮らす住宅地ですが、南側はブールバールといって基幹道路沿いにビルが立ち並び人々が集う都市としての発展の象徴のようです。駅の東側は「酒の都・西条」を象徴する酒造メーカーの伝統的な酒蔵が並んでおり、変化を続ける東広島市の縮図みたいな構図となりました。

 レンズをもう少し東側に向けてみますと、市域を南北に分断しているのがJR山陽本線でなのですが、南北を交流させるために線路を跨ぐ陸橋が計画され、用地買収が進んでいるさまを見ることもできます。大げさに言えば「都市のダイナミズムを見る」事が出来ますので、測量や不動産関係では有効なツールであるといえます。

 飛ばすとなれば公共の場所でと思っていたのですが、場所によっては色々と決まりごとがあり、先日たまたま、安芸国分寺歴史公園に行ってみますと、色々と有る規制看板の中に以前には気付かなかった「ラジコン・ドローン禁止」の看板が北側の住宅近くに立てられていました。

 2年ほど前、臆病者の私が飛ばしたのは人知れず朝早い時間帯に民家と距離を置いた場所で、私なりには配慮したつもりです。しかし万が一の事故に対する予防措置という意味合いからも今後ドローンの普及と比例して各所で規制の看板も増えてくる予感がしますので前途が明るいばかりではありません。

 この後、心配になって三ツ城古墳も様子を見に行ってみたところ、ペットの糞の注意看板はありましたが、いずれドローンに関する看板が出ないか、ここも注意が必要です。


災害に関心を持つ

 昨年の「平成30年7月豪雨災害」は、今も東広島市大きな傷跡を残しています。福山市では豪雨後にため池決壊の水害も報告され、それまでは無関心だったのですが我が家の裏山はどうかなと思ってGoogle Earthで見たところ、ちょっと離れた所にため池が有った事が発覚し、それではとドローンを携えて見に行きました。

 ため池自体はそんなに災害の元になる規模では無いようで安心したのですが、我が家の裏は山林を隔て湿地帯が有ったりする事も知りませんでした。

 ところが半年ほどしてその山林が伐採され整地する工事が始まっていると近所でも話がされるようになりました。新たな宅地造成かと思っていたのですが、工事が進んでいきますとどうやら太陽光による発電所のようです。

 周囲を360度撮って見ますといたるところに太陽光発電所があります。再生可能エネルギーというメリットの一面と、設置にあたっては山林の伐採による保水力低下と雨水が流れて行く先で新たな問題として地元では懸念される事もあり、「環境問題の光と影」を考えさせられる、今の時代を表す風景と言えるでしょう。


 東広島市中心部は盆地に形成された都市で周囲を山に囲まれているのが特徴で、見渡すといたるところの山腹で「平成30年7月豪雨災害」の土石流による傷跡がみられます。

 災害当初は素人がドローンを飛ばして工事の迷惑になると思い、飛ばしませんでしたが、時間も経った事ですので、水の力の恐ろしさを見ておこうと考えました。

 普通、「樹木」は私たちがぶつかって行ったところで弾き返される、「しっかりしたものの代名詞」ですが、ここで見る樹木はまるでメリケン粉の山に突き立てた爪楊枝みたいな感じに見えました。

 豪雨時にはこの土砂と樹木が混ざった濁流が山陽自動車道の上になだれ込んで各所で道路が分断されていきました。

 私のような一般人がドローンを飛ばすには、「目視の範囲で行い、夜間は飛行禁止」という縛りがありますが、最新型のMAVIC2には「MAVIC2 Enterprise」という産業用のグレードが有り、スポットライト、スピーカー、ビーコンなどのオプションが備えられ、条件が整えば夜間飛行もできるようです。

 またもう一つ上の「Enterprise DUAL」というグレードでは、可視光カメラの他に赤外線カメラも備えられ、遭難者捜索や火災の情報収集などに用いるため、自治体などでも普及して人員も配置されていくのではないかと思います。


地図の代わりにでも

 私たち印刷に携わるものにとって「見る人に分かり易く伝える」という事はいつも頭の痛い問題です。最近ではパンフレットなどに入る地図Google Mapを張り付けるケースが多いですが、手をかけて地図を書き起そうとすると実際の距離感がわかりづらいことがあります。そこで対象施設の周辺を空撮してみますと、地図の代わりに使えるのではないかという可能性を感じます。

 対象の施設がどのような環境の場所にあるのか周囲の様子と一緒に伝えることが出来ますし、下の写真で言えばメインの国道にあるバス停からのアクセスの距離感も伝わりやすいです。

 ただしこの写真は稲刈りが済んだ農閑期の撮った色気が無い写真ですので、Photoshop Elementでいたずらして、田んぼに緑色を入れたり、法面の災害跡らしいブルーシートを隠したりしてみました。腕のたつオペレーターさんの手に掛かればアイデアや工夫次第でもっと見やすく彩り豊かな加工も出来るのではと思います。


結局、海の上かな

 ドローンのこれからの普及について書くつもりでしたが、書けば書くだけ規制との背中合わせを意識しないといけない事を再認識しました。

 人様よりちょっと早く始めたドローンですが、2年の間に世間の認知度が上がるにつれ、繰り返しになりますが前述の規制看板などはきっと増してきます。

 そういうことで安心して飛ばせることが出来るのは海の上かなと思う次第です。落ちたら水没じゃないかと思われそうですが、人、車、家屋などに損害を与える事を考えると、「10万・20万円のドローンの1機くらい惜しくない」位の感情を持てるようになりました。当然何事もなく離陸したポイントに戻ってきてくれるのが一番ですので、そのためには「慎重である」「臆病である」事は重要だと思います。

 与えられた条件の中で、有効なツールで有る事を祈りながら、これからの普及を見守りたいと思います。

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