前回は「そもそもカメラとは」という観点から歴史をちょっとだけ学んでみました。カメラ・オブスクラから緩やかな時間の流れの中で進化してきた映像機器ですが、記憶媒体が最近まで主流だった写真用フイルムより近年フラッシュメモリに置き換わったデジタルカメラと推移してから、ムーアの法則のように急速に進化をとげています。
そこで今回は、カメラの歴史を勉強しだした第2回目のレポートとして、デジタルカメラの黎明期に、従来のレンズとモニターが一直線なレイアウトから羽ばたいて、レンズ部分と本体との角度を可動させる事ができるカメラ達を眺めました。
「スイバル式カメラ」「レンズ部回転式カメラ」「フリーアングルモニター式カメラ」などが、伝統的な「カメラ然」としたスタイルから解き放たれ従来に無い様々なデザインやレイアウトを持ち込み試行錯誤しながらも百花繚乱で急速に進化して行った様子をメーカー毎に特徴を挙げてみました。
ここで使用した写真は、趣味のポンコツいじりが高じて段ボール箱にキログラム単位で買い集めた結果、我が家の「趣味の部屋」に居ついてしまったデジカメ達に出演してもらいました。
デジカメの先頭を走った「カシオ」
エポックメーキングな例としては国立科学博物館に「未来技術遺産」として登録をされているほど革命的だった、1995年発売のカシオの「QV-10」というモデルが上げられます。
それはレンズ部分が回転して「自撮り」できるという特徴のほかに、これ以前のデジカメではモニターを装備しておらずフィルム式のカメラ同様にデータをパソコンなどに抜き出さないと撮影結果が分からない品物だったそうです。そこへ撮った結果が直ぐに分かる「モニターを装備した」ことが以降のデジタルカメラ発展の大きな礎になったそうです。
QV-10は以前ポンコツで持っていたのですが処分しましたので、その血統を引く2000年発売の「QV-2300UX」の写真でお茶を濁しておきます。
ちょっと横道にそれて、そんなカシオも昨年デジカメ事業からの撤退が発表されましたが、その前に国内では未発売なのですが、TR-M11という夢のある自撮りデジカメがアジア圏では発表されていたようです。通称「テクマクマヤコン」と言われているそうですが、下の動画を見るとちょっと微笑んでしまいそうなカメラです。
風格の「ニコン」
ネットで「スイバル カメラ」で検索しますとニコンの「Coolpix 950」が多くヒットします。下の写真では大きい方の銀色のボディのカメラが先代の「Coolpix 900」ですが、造りが安っぽく余り評判は良くなかったようです。その次の黒いカメラが「Coolpix 950」でマグネシウムボディに黒い塗装で赤いグリップがアクセントのニコンの「F」の名を冠する一眼レフを連想させるいでたちでした。
今の時代、デジカメでしたらメーカーが違えど説明書が無くても十字キーとOKボタンで大抵の操作ができますが、この当時はそれらの操作系が確立しておらず、この機種ではOKボタンの役割はシャッターボタンが担っていて、使い勝手がまだ手探りの過渡期だという事がわかります。その不便さを知るだけでもカメラの進化の一コマを垣間見たようで勉強になりました。
下の角の取れた近未来的な優しいフォルムのデジカメは2003年発売の「COOLPIX SQ」というカメラで、専用のリチウムイオン電池を使うようになって「950」よりはかなり小さくなってきました。アルミとステンレスを用いて作られたボディは「950」譲りで適度な重みと節度のある動きです。
今の技術でリバイバルしてほしい「京セラ」
他のメーカーでも様々なモデルが発売されていましたが、京セラの薄型でマグネシウム製ボディのスイバル式カメラの「ファインカムSL300R・SL400R」のシリーズがコンパクトでスタイリッシュでした。
SL300Rが300万画素、SL400Rが400万画素という分かりやすいネーミングです。
カチカチとレンズ部を可動させられて小気味良く感じ安っぽさは無いのですが、CONTAXブランドで革張りボディにカール・ツァイスレンズを装備した「SL300RT*」は存在感が一層増しました。
スタイリングは良いのですが、一番の欠点は消費電力が多いのかバッテリーの持ちが短く旅に持ち出す気にはなれませんでした。今の技術で性能向上してリバイバルされるなら是非持ち歩きたい1台です。
可愛らしくも自己主張する「PENTAX」
ペンタックスは今では「リコーイメージング」と社名が変わってしまいましたが、ここで紹介するのは「Optio X」というスイバル式カメラです。ここまで紹介してきたカメラはレンズはボディ内でズームしますが、このモデルはレンズが飛び出す形式になっています。
格納時はかなり薄型に見えますが、電源をいれるとレンズが飛び出してカメラとしての自己主張をしているようです。回転軸で繋がっている本体側にはモニターの他にバッテリーも搭載されていますが、ファインカムSLシリーズより持ちが良いし、500万画素ありますのでお散歩カメラ位には使えます。
レンズ回転式の「SONY」
SONYのデジカメは「サイバーショット」という商品群で語られますが、その第一号が1996年発売の「DSC-F1」というモデルでレンズ部が180回転して正面から真後ろまで可動します。ただこのモデルはメモリーステイックなどの抜き差し出来る記録媒体には対応していないのでポンコツで入手しましたが始末してしまいました。
手元に残っていたのは下の写真の黒い「F55K」、シルバーの「F77」(右)、「F88」(左)が有りました。
この中で「DSC-F88」がFシリーズの最終モデルになるのですが、この機種だけ3倍ズーム機能が搭載されていました。
10年以上昔、こんなポンコツの趣味にはまる前に所持していて、レンズが回転することでローアングル撮影の被写体に近づいて撮る事の楽しさを教えてくれた1台です。小気味よい操作感とそこそこ持つバッテリーで、今でもお散歩用には使えます。
新機軸を打ち出した「Panasonic」だけど
私のコレクションの中ではPanasonicの「LUMIX」と呼ばれるデジカメ群はモニターが可動する構造には熱心でないように感じるのですが、2002年スタートの「D-snap」 という製品群は新たなSDカードという媒体を前面に押し出した野心に富んだカメラだったようです。
そのような野心作で新機軸を打ち出していたのですが・・・残念ながら後に携帯電話やスマホに良いとこ取りされたそうです。
フリーアングルモニター式カメラ
過渡期のデジカメのレイアウトの変遷を止め処なく眺めてきましたが、今ではスイバル式やレンズ回転式のレイアウトは姿を消してきています。現在は高級コンパクトモデルやデジタル一眼レフでは必須アイテムになってきた「フリーアングル式モニター」が進化の過程で生き残ったようです。
このレイアウト自体は珍しくはないようで、ビデオカメラでしたら必須のモニター形式となりますので、熟成された技術だと思います。
2000年頃の過渡期には下のRICOH「 RDC-7」という双眼鏡のように持つモデルも見受けられましたが、同時期のこれより大型のモニターを備えた「RDC-i700」というモデルは通信機能を持っていてインターネット閲覧も出来るなど飛びぬけた機能を持っていたそうですが、時代の方が追い付いてこなかったらしいです。
時代が現代に近づいてくると各メーカーで「ネオ一眼」という一眼レフに似たスタイルの高倍率レンズを搭載したデジカメのジャンルが出来上がってきました。
その中でもハイエンドクラスの製品の背面には、まだ画面は小さいですがフリーアングルモニターが備えられていました。
上からニコンのCOOLPIX 5700、キャノンのPowerShot S3 IS、コニカミノルタのDiMAGE A200となります。
デジカメと言いながら最後はデジタル一眼レフの登場で、私が2台目に買った一眼でオリンパスの「E-330」という可動式モニターを備えたモデルです。一眼レフは従来構造上モニター上でライブビューが出来ないそうなのですが、この機種はモニター用にCCDをもう1枚追加してその問題を解決したそうです。
SONYのDSC-F88以来のローアングルが楽しめたカメラで、これで尾道のネコ達と睨めっこをしていました。
このようにデジカメ過渡期当時のカメラは今どきのカメラに比べて、起動に時間が掛かるし、バッテリーは持たないし、モニターは小さくて暗いし、オートフォーカスは迷ってばかりで音は賑やかだし、欠点だらけで撮るには不満が多いのですが・・・、反面そのスタイルは今では、かえって新鮮で、撮るよりは持って歩いていたいし、無理して小型化していない分、節度のある操作感が有ってあれこれと触っていたい個性豊かなカメラ達でしたので、今の洗練された技術を内蔵してリバイバルしてほしいのですが、時代のトレンドはスマホ一辺倒に移って叶わない夢です。
さて、カメラと言えば精密機械の代表ですので気を使って使用しますが、そんなに条件の良いコンディションばかりでは見えてくる映像世界が広がりませんので、次回は大自然の中に飛び出していける機能を備えた、防滴、防水、防塵、耐寒、耐衝撃などの特徴を備えたカメラ達を我が家のガラクタ部屋から持ち出してみます。
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