しまなみサイクリング入門(6) 因島1周サイクリング編

 前回から「しまなみ各島を1周しよう」というテーマで、尾道側から向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島の順に、全ての島の外周を1周し、しまなみ海道サイクリングの「推奨ルート」に無い部分を紹介する事にしましたが、今回は尾道側から2つ目の島にあたる「因島」をご紹介します。

 古くは村上水軍の拠点として知られ、近年ではポルノグラフィティ、女優の東ちずる、小説家の湊かなえなど有名人の出身地としても知られています。


まずは時計回りで南下してみる

 向島から因島大橋を渡って島の北東部に到着しますが、反時計回りの右に行けば走り慣れた「推奨ルート」になります。今回は反対の左に曲がって未知の道を走る時計回りで因島を1周することにしました。

 その心は因島の南東部分は「水軍スカイライン」と呼ばれ、車で行くには風光明媚で良いのですが、聞くところによると自転車にとっては難所だそうです。それならば朝の涼しいうちで体力を消耗する前にクリアしておこうと考えたからです。

 因島大橋からの取付道を降りて島を周回する道路に出ます。目の前にバス停があるので時刻表を見ると、1時間に1本のダイヤとなっていました。サイクリングは途中で人車どちらかにトラブルがあると走れませんので、万が一にもバスのお世話にならないように走り出します。

 一応念のために予備のチューブラータイヤはサドルの下にねじ込んで、必要な工具とインフレーター(空気入れ)、ファーストエイドキットは常備しています。

 下の地図の島の北側を通るオレンジ色の細い線がしまなみ海道サイクリングの「推奨ルート」になります。

 そして因島大橋から南下している水色の線が今回ご紹介する因島一周ルートとなります。

 因島大橋から東岸を南下して行きますが、勾配のない海岸沿いを快調に走ります。途中で先ほど渡ってきた因島大橋の真横からの見事な全景が歓迎してくれているようにも見えます。 この先に進むと河口のように回りこむ所に中庄地区という商業エリアがあります。Wiki先生に聞くところ、湊かなえとポルノの岡野昭仁はこの辺り出身だそうです。ここから山側に行くと因島水軍城があるのですが、未だ行けていません。

 自転車は河口部分を回りこんで進み、そこには幕末に活躍した囲碁の棋聖、本因坊秀策の生家跡周辺に建つ「本因坊秀策囲碁記念館」があります。私は囲碁を嗜(たしな)みませんが、囲碁ファンにとっては聖地のような所らしいです。 このしばらく先からはこのサイクリングの山場である未踏の「水軍スカイライン」といって山が海岸沿いに迫ってきて民家の無いエリアが続き、中腹を這うような道をアップダウンしながら進む事になりますので、一応は脱水症状・熱中症対策で「OS1」まで用意しておきました。

 一応、この記事のコンセプトは体力バリバリの健脚家の視点と違い、「健康だけど体力に自信が持てない初心者」の目線で書いています。この区間はスカイラインと言う名が付いており、いくつかの展望台で一休みしながら走りはしましたが、風景を楽しんだというより、雑念を払い心を空白にしてペダルを踏むという「修行した」という感想です。

 やっと人里が見えて因島の南側部分に下りて来ました。さらに南下すると地蔵鼻という悲恋の物語のある観光スポットの案内看板がありますが、ここも未だに行けていません。

 そしていよいよ因島の最南端となります。家老渡という港から愛媛県の弓削島に渡るフェリーが出ています。時刻表を見ると朝と晩は20分おき、日中30分おきの頻発で、私の住んでいる所の朝と晩しかバスが無いのとは大違いです。その弓削島の先の佐島、生名島の3つの島は橋で結ばれていて、生名島は因島の土生と目と鼻の先の距離がフェリーで結ばれています。

 そちらは「ゆめしま海道」というサイクリングルートになっていますが、ここもまだ先の楽しみにして行けていません。そのうえ、もう1島、岩城島との架橋も2021年完成予定で進んでいます。

勾配のない西岸を北上する 

 最南端から一転して今度は西岸エリアを北上して行くことになります。まずは塀で囲まれた造船所の脇を通ります。今では造船不況といわれていますが、旧日立造船のジャパンマリンユナイテッドの因島工場で、長らく因島の経済を支えてきた事業所です。 その先に進むと因島の目抜き通りとも言うべく土生(はぶ)エリアになります。商業施設が並びますが、この周辺では、うどん入りが特徴の「因島のお好み焼き」略してインオコが最近もてはやされています。 なおも北上して行きますと生口橋が見えてきて、前にも書きましたカフェの「菜のはな」さんというサイクルオアシスがあります。ここでは来るたびに「空いたボトルが有ったら水を入れますよ」と声をかけて頂けて、水が最高のご馳走に感じられる場所です。この一言の心遣いを私も仕事で見習わないといけないと思います。

 前はランチを頂きましたが、この時は暑いので抹茶ミルクのカキ氷でクールダウンさせてもらいました。 ここの道路わきの植え込みに何やら三脚に乗った箱と、引っ込み思案っぽい人が隠れて立っていましたが、車も自転車も交通安全に気を配って走りましょう。


推奨ルートに入る

 「菜のはな」さんから先は島を半周してやっと「推奨ルート」(冒頭の地図のオレンジ色のルートです。)に戻ります。基本的に因島の西岸は勾配がない走りやすいルートですが、ここからはちょっと道幅が狭い感じで、少々自動車を注意しながら走る必要があります。

 推奨ルートでは島をショートカットするために山間ルートに入る交差点を右に曲がる所があるのですが、そこを直進しますと因島高校の先に健康食品や肥料を手掛ける「万田酵素」の工場に併設の「万田びっくりファーム」があります。見上げるような巨大な大根のオブジェが目印で、ここでは無料で見学させてもらえますので立ち寄ってみました。 万田酵素を植物に与えると大きく育つ効果があるそうで、カボチャは言うに及ばず、スイカ、ヒマワリ、ヘチマなど今までの常識が変わってしまうくらい大きくなっていました。暗い地下室にも案内され地中の根っこの様子も見せてもらうことが出来ます。

 万田酵素の製造工程も様々な種類の材料が容器内で静かに熟成していくさまを見学させてもらい、試食もしましたが、馥郁としながらも、何だか蕎麦味噌のような味わいでした。

 車と違って間近な光景を観察できるのも自転車の魅力と前にも書きましたが、万田酵素を出て道路わきの水路を見ると、クサフグがいっぱい泳いでいました。

 表情が微笑ましくもある反面、毒が有って食べるのにはハードルは高いし、釣り人にとっては釣り餌を持ち逃げされる「外道」の王者らしいです。

 さて、推奨ルートの山中に上がって行くルートに戻り、因島北インター近くの山の方をカメラの望遠で見上げると展望台のようなものが見えます。麓には「にほんの里100選 白滝山と石像群・五百羅漢」という看板があります。

 ここは日を改めて「原動機」の付いた自転車で上がってみましたが、今まで来ていなかったのが勿体無いくらいの「ザ・瀬戸内海国立公園」みたいな光景が広がります。まず眼下には因島大橋を望む事が出来ますが、展望台から見下ろすと石仏がずらりと並んだ光景に目を見張ります。

 小説「村上海賊の娘」にも出てくる因島村上家の6代目当主、村上吉充が戦国時代の1569年に観音堂を建立したと伝えられ、かなり後になりますが江戸後期の1827年に柏原伝六と弟子達によって五百羅漢の石仏が作られたそうです。

 この麓一帯は除虫菊で有名で、下りた所には因島フラワーパークがあるのですがここも前を頻繁に通り過ぎるだけで未だに行けていません。

 海から離れたルートで殺風景な様でも、所々の畑で季節ごとに作物を見るのも楽しくもあり、以前紹介した可愛いかかしも笑顔で歓迎してくれます。 そのような山上の必見ポイントから海辺に下りますと、1周サイクリングのスタート地点、因島大橋とともに「しまなみビーチ」が見えてきます。

 この一帯は、白い恐竜が目印の夏場は家族連れが2本のスライダーが備えられたプール遊びで賑わう因島アメニティー公園、大崎浜キャンプ場、因島大橋記念公園などの行楽施設が集中し、橋に向かって階段を上がると西瀬戸自動車道の大浜パーキングエリアで買い物もできます。

 この時は村上水軍時代の伝令船などに使われて、夏場の水軍祭りではレースも行われる「小早」の体験乗船のような行事もしていました。


 結局、「未だに行けていない」所が多いのですが、因島の外周を回った事にして頂いて、次回は広島県側と愛媛県の県境の島、生口島をご紹介します。

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