しまなみサイクリング入門(2) とりあえず片道を走破してみよう。

 屋外の木々から散った落ち葉が道路を赤や黄色に染めてきましたが、そんな中で老眼と戦いながら、お預かりした原稿を拝見して仕事を楽しんでいる、window tribe です。

 尾道の事を散々書き連ねましたので、そこから派生して「しまなみ海道」サイクリングの紹介をしてみようと思いますが、出てくるのが橋と自転車ばかりで興味の無い方には退屈この上ない記事となります。しかしこれから行ってみようと思うけれど、どんな感じなのか不安な方には少しは参考になると思いますのでお付き合いください。

 前回の序章では初めての「しまなみ海道」サイクリングに挑戦するにあたり、自分の力量よりちょっと冒険したプランとして尾道駅から朝7時のバスを使って今治側の拠点「サンライズ糸山」まで行って、片道約70kmを走って日帰りで尾道に戻ってこようと企んだところからの続きになります。


今治から尾道を目指そう

 時は初秋の2014年9月14日、サンライズ糸山で朝食を済ませて出発となりますが、レンタサイクルの受付では来た時より行列が長くなっていますので、自転車を借りられる方は早起きは三文の徳になります。

 9時半前に、いよいよ尾道に向かってペダルを漕ぎ出します。全長4kmに及ぶ来島海峡大橋の自転車専用レーンに向かってループ状のスロープを駆け上がります。橋の上では3連吊り橋の橋脚が遠くになるに従い霞んで見えますが、写真を撮るのも忘れて眼下の海を見ながら爽快に走って、今治側から最初の島、「大島」に降り立ちます。

 西瀬戸自動車道の橋から一般道に降りて直ぐのところが道の駅「よしうみ いきいき館」となり、10時前にここを出ると左に折れて海の見える風景とは暫くの間、さよならとなります。初しまなみ海道ですので、この先がどうなっているのかは、その時点では皆目分かりません。

 面積で言うと宮島の1.5倍ほどある、瀬戸内海で大三島に次いで第6位の大きな島の海の見えない内陸の道をひたすら上がったり下りたりしながら縦断することになります。9月の半ばですので、汗ばんで、日ごろの不養生が祟って息が切れて、一発で「大島」が大嫌いになりますが、まさか後々に毎月のように通う大好きな島になるとは、この時には夢にも思いませんでした。

 辛いと言いながらも30分位で反対側の宮窪地区に差し掛かり海が見えてきます。流れの速い海峡部分の向こう側に小さな島が見えますが、この時には和田竜の小説「村上海賊の娘」の舞台で村上武吉の本拠地「能島」だなんて意識はなく「海が綺麗じゃのう」位のつもりで走りぬけ、2本目の伯方・大島大橋に差し掛かります。時間が10時40分ですので70~80分で大島を走り抜けた事になります。 2つ目の島である「伯方の塩」で有名な「伯方島」に降り立ちます。今しがた渡ってきた伯方・大島大橋を眺めながら道の駅「伯方S・Cパーク」で、初秋とは言え涼を求めて塩ソフトクリームを食べます。

 11時過ぎにコースに復帰してしますが、推奨ルートでは伯方島の西岸をかすめるように走るのでそんなに距離は無いのですが、左手に「しまなみ造船」が見えてくる辺りで上り坂になりちょっと息が切れます。11時20分に3つ目の「大三島橋」を渡って、11時半過ぎに愛媛県最大の「大三島」の海岸端に降り立ちます。

 この島も外周は30kmほどあるのですが、推奨ルートでは東岸を4knほどかすめる位の距離しか走りません。

 ここまで上がったり下りたり辛い思いもありましたが、ここからしまなみ海道の白眉、多々羅大橋が近づいて来るのを見ながら平坦な道を真っ直ぐ走る快走ルートになります。但し、人力で走る自転車は風の影響を受けやすいので、追い風ならまだしも、向かい風の時には車では味わえない「自然」というものを身をもって学ばせてもらえます。

 11時50分に道の駅「多々羅しまなみ公園」に到着します。ここで優美な多々羅大橋をバックにして愛媛県のゆるキャラ「みきゃん」と記念撮影します。

 4つ目の橋の多々羅大橋を上がっていく最中に尾道までの距離が39kmと示されています。橋の下の見る角度によって表情を変える構造の幾何学模様も楽しみながら全長1480m、主塔の高さ220mの国内最大の斜張橋、多々羅大橋の中央部で愛媛県と広島県の県境となり、今治から2時間半から3時間弱でこのサイクリングのほぼ中間点となります。

広島県突入

 サイクリング後半に入り、多々羅大橋から降りて広島県側の最初の島、「生口島」で、2kmほど海辺を走ると12時半頃に瀬戸田サンセットビーチに到着となります。
 この日は何だか賑やかで自動車自慢のイベントのようで、俗な言い方をするとランボルギーニやポルシェなどのスーパーカーやベントレーなどのヒストリックカーが目白押しでしたので、ここで乗り物好きとしてはしばらく足踏みとなります。 生口島はほとんど坂の無いフラットで走りやすい島で、瀬戸田界隈には平山郁夫美術館や耕三寺など観光スポットもあります。残念ながら今回は先の見えない旅ですので素通りしますが、「島ごと美術館」というコンセプトで随所にアート作品が展示してあります。
 推奨ルートで島の北側を半周すると対岸に因島が見えてきます。暫く進むと5つ目の生口橋となります。 生口橋から下ると5つ目の島の「因島」に入ります。面積は宮島より少しばかり大きく、ついでに先ほどの生口島も宮島とほぼ同じ面積です。

 取付け道を出て直ぐの所では生口橋のすっきりした全景が見えます。走るのに夢中で2時前になっていましたので、ここのカフェテラス「菜のはな」で遅めの昼食にします。ここでは空いているボトルがあれば水も入れてあげましょうと声をかけられるのですが、まずは「水」が最高のご馳走になるという新鮮な発見です。

 一休みが済んで再び走りますが、因島の西岸を暫く走った後、島をショートカットするために内陸部の坂道に入っていきます。大三島や生口島の快走コースをしななみサイクリングの「」とするならば、大島と因島の内陸の登り坂は初心者にとっては「」というより「」のような気分です。気分的に「闇」だったのでこの辺りでは写真も撮っていませんでした。

 因島フラワーセンターなどにも目もくれずようやく海岸端に下りてきてビーチの見える因島大橋記念公園までは快走できますが、そこの白い恐竜像が見えたあたりから因島大橋に上がっていく坂道が初心者にとっては疲労の極致で、ちょっとだけ押して歩きました。

 6つ目の橋の因島大橋は2階建て構造で上部が自動車道で、下部は自転車・歩道となっています。ここを下りると最後の島の「向島」となり時間は3時頃になっています。逆光に見える因島大橋を見て、たいした坂の無い快走ルートでラストスパートです。

 ゴールの尾道へは前回申しましたように尾道水道を横切る尾道大橋は自転車にとっても車にとっても共存できるような道ではありませんので、3航路ある渡船で格安の110円払って渡ります。

 渡船でゴールの尾道港に着いたのが3時半過ぎですので今治から6時間で戻って来た勘定になります。平均速度にすると12km/hにも満たないのですが風景を見たり休み休み走った結果です。しんどい割には体に痛い所はありませんでした。

 この日は尾道港辺りでもイベントがあって賑やかで、西側の「ONOMICHI U2」ではボンドカーとしても有名なTOYOTA 2000GTがズラリと並ぶイベントがありここでも乗り物好きを喜ばせてくれます。

尾道でアフターサイクリングを楽しむ

 さて、尾道に戻って自転車を畳んで電車に乗れば直ぐに家に帰れるのですが、この日は体験ついでに「ゲストハウス」というサイクリストがよく利用する簡易な宿泊施設を予約しておきましたので夜まで尾道漬けです。自転車の後ろにザックを付けていたのもこのためです。

 チェックインして汗を流し新開のレストパブ&ライブハウス「オエコモヴァ」で、以前紹介したでっかいハンバーガーとビールで一息つきます。

 はしごで2軒目は古本屋とバーが合体した「8ページ」で砂肝ペペロンチーノとジンライムでこの日のしまなみ初心者サイクリングを振り返ります。

 程よい時間になったかなとゲストハウスに戻るのですが、談話室では今治からの60代サイクリストのお父さんを筆頭に、東京芸大の女子学生を囲んでまさしく老若男女の宿泊者が盛り上がって、スイカと酒を振舞われ夜が更けていきます。お父さんは明日今治に戻るので早いからと言いつつも12時を回っていましたが、三々五々寝床に就きます。

 翌日は朝6時過ぎからお父さんがピチピチのタイツでロードレーサーに跨って行かれるのを見送ってから、私は徒歩でお寺を巡るのですが、お寺の紹介はここまでで十分長いのでまた別の機会にでも。

 それにしても60代で往復・・・。ということで次回は翌年の2015年ゴールデンウイークに初心者が尾道から今治で一泊して往復するという徐々にエスカレートしていく様子を書いてみます。

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