原稿を拝見するのもお仕事の一つの「 window-tribe 」です。
原稿というのは多くの言葉の集合体ですので知らない言葉に出会うと調べてみて、うっすらと知識を積み上げて、昨今の芸能人クイズ王とか東大クイズ王の末席位には入れると「家では天狗になって」言っています。
そんな中、日頃から何気なく使っている諺(ことわざ)でも、日々の暮らしの中で「ああ、こういう事だったのか」と語源に出会えると喜びもひとしおです。
今回はその「喜びのお裾分け」を致してみようと思いますが、一部に閲覧注意の映像もありますので、ご注意ください。
「急がば回れ」
飛行機を筆頭に中途半端な乗り物好きを自認していますが、自転車も中途半端な自転車好きで安いのから買って徐々にステップアップして気付けば7台の自転車に自宅の一部屋を占拠され、先だって1台減らして6台にしたところです。
持っている以上は乗らないといけませんが、近所のしまなみ海道は相当走って飽きてきたので、折畳み自転車のブロンプトンとかいうのを担いで、琵琶湖一周の旅に出た事があります。
滋賀県の草津市に琵琶湖の南端部を横断する近江大橋という橋があり、その北側には「矢橋(やばせ)」という地名があります。
近江大橋から下って琵琶湖から瀬田川という河川になった辺りに「瀬田の唐橋(せたのからはし)」という橋が架かっています。古くから交通の要衝であると同時に戦略的にも都を守る重要拠点だったそうです。因みに瀬田川は下流で「淀川」と名を変えます。
今でこそ湖東を東海道本線が通っていますが、古くは湖東を通っていたのは中山道で東海道は三重県側から京に向かっていたそうで、その二つの街道が合流するのが草津宿です。
ここから京に向かうには矢橋から琵琶湖を帆船でショートカットするか、下流の瀬田の唐橋まで行って陸路を歩くかの選択をするそうです。
楽をしたいのは誰しも考えることなのですが、湖西にそびえる比叡山から東向きに「比叡下ろし」という風が吹く事があり、船が進まないのならまだしも、転覆の恐れさえあったそうです。
そこで言われたのが瀬田の唐橋を通る陸路を行く方が結局は早いということで「急がば回れ」という諺ができたとの事です。
昨今の世相は二言目には「忙しい」を連発しながら横着をするという偏見を持っているのですが、私のような一つづつ手作業をしていた枯れた世代はカタツムリのような歩みでも確実にゴールにたどり着くもんだなと、一人で納得しています。
実地に行って対岸にそびえる高層ホテルを眺めながら、自転車とはいえ自らの力で道のりを実感できるので、それはそれは感動します。
しまなみ海道に比べて勾配が少ないと舐めて琵琶湖に来たのですが、実際、彦根の手前を走行中に雨と強烈な向かい風に遭遇して、漕いでも漕いでも前に進まず自然の力を舐めてはいけないと身をもって知る事になりましたが、それでも翌日の湖北の朝の光景は心が洗われました。
「蜘蛛の子を散らす」
私は結構楽しんで仕事をしているのですが、それでも忙しい時があり通りがかりの者に「手伝え!」と言いでもすると、「約束の時間が・・・」などと言って慌てて立ち去っていきます。そう「蜘蛛の子を散らす」ように。
朝にジョギングをする人がいたりしますが、同じカロリーを使うなら何かの役に立つ使い方をしようと、通勤距離が近いのもあって出勤前に工場の雑草・植木と格闘するのですが、そのときに丹精込めて作られた「蜘蛛」さんの巣に捕獲されてもがく事が往々にしてあります。
蜘蛛が「好き」というより「嫌い」という人の方が圧倒的に多いとは思いますが、人から見ると気持ち悪い蜘蛛も、蜘蛛から見たら人間が「進撃の巨人」みたいに気持ち悪いのではと考えるようになり、「おっかない者同士」歩み寄ってみようかと考えるようになりました。
私の職場のテラス部分に蜘蛛が巣を張っていて、観察していました。日本で蜘蛛といえばコガネグモが代表選手みたいでよく間違えられるそうですが、ジョロウグモの雌のようです。暫く見ないなと思っていたところ、巣に白い不織布の切れ端みたいなのが鎮座して黒い粒々が密集していました。
数日後にそこを観察していましたら、アニメ「甲殻機動隊」のタチコマ君みたいなのが無数にいました。
おっかなびっくり近づきますが、一気にバラバラに動いて行って「蜘蛛の子を散らす」とはこういう事だったのかと納得します。これが全部大人になったら大変な事になりますが、大多数は自然に淘汰されていくのでしょう。
決定的瞬間は逃しましたが動画も撮っておきました。向こうは変なのが来たと大騒ぎだと思いますが、可愛らしくもあります。
ついでに部首の「虫偏」について
今では「虫」といえば6本足の昆虫を連想しますが、虫偏を用いる漢字の中でも「虹」のどこが虫なのかと疑問に思ったことがあります。
以前、社内でも調べてもらったのですが「虫」はヘビを象った象形文字だったそうで、哺乳類、鳥類、魚類以外の小動物を指す守備範囲の広い言葉のようです。
昆虫を含む節足動物(蜘蛛、蟹)や爬虫類(蛇、蜥蜴)、両生類(蛙)に多く使われているのはそのためのようです。
じゃあ「虹」は何なのかといえば中国では古に虹は竜の化身のような捉え方をされていたようで、伝説上の生き物とは言え虫の仲間入りをさせられたようです。
もう一つおまけに
日々の仕事では専門家の方々が書かれた原稿が多く、門外漢の私にはさっぱり分からない事の方が圧倒的の多いです。その中でもこのように疑問に思ったことを一歩ずつ調べながら少しでも発注者・執筆者の方々に寄り添う努力をしておりますが、時として油断して「猿も木から落ちる」「河童の川流れ」をやらかす事もあったりします。
そこで最後に、「百里を行く者は九十里を半ばとす」の気持ちを忘れないように歩んでまいります。
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