シンです。
この間年が明けたと思ったら、気が付くと1月も3分の2が過ぎてしまいました。今年の冬は暖冬と言われていますが、広島でも先日まとまった雪が降り、ようやく冬らしくなってきました。いよいよ寒さも本格的になってきましたが、みなさん風邪などひかれていないでしょうか。
さて、今回のブログは、「食物(しょくもつ)アレルギー」について取り上げます。この内容について取り上げようと思った理由は、最近私が読んだある印刷物の記事がきっかけでした。それは2012年12月当時、小学5年生の女子生徒が食物アレルギーによるアナフィラキシーショック(急速な血圧低下によるショック状態)のため死亡したという記事でした。恥ずかしながらこの記事によって初めてそういう事故があったことを知り、とても印象に残りました。以前から最近の食品のパッケージの原材料表示がアレルギーを起こす恐れのあるものを明記するようになってきていて気になっていた折でもあり、今回取り上げることにしました。しばらくおつきあいのほどを。
1.食物アレルギーとは
もはや日本語となっているアレルギーはドイツ語の”Allergie”に由来します。アレルギーは免疫反応が特定の抗原に対して過剰に起こることをいいます。免疫反応は、外来の異物(抗原)を排除するために働く、生体にとって不可欠な生理機能です。アレルギーの語源はギリシア語のallos(変わる)とergon(力、反応)を組み合わせた造語で、疫を免れるはずの免疫反応が有害な反応に変わるという意味です。
食物アレルギーは、原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して起こる生体にとって不利益な症状(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシー反応など)と定義されています。食品によっては、アナフィラキシーショックを発生して命にかかわることもあります(そばが有名)。
乳幼児から幼児期にかけては食物アレルギーの主要な原因として鶏卵と牛乳がその半数以上を占めます。青年期になるにつれて甲殻類が原因の事例が増え、牛乳が減ります。成人期以降では、甲殻類、小麦、果物、魚介類といったものが主要なアレルギーの原因食品となります。
日本では食品衛生法に基づき、「特定原材料」として指定する品目について表示の義務づけがなされており、また、その他の一定の品目について「特定原材料に準ずるもの」として通知により表示することが奨励されています。
2.食物アレルギーを起こす「特定原材料」について
(1)表示義務あり(省令で定められたもの)
特にアレルギーを起こしやすいとされる食品のうち、発症数、重篤度から考えて表示する必要が高いものとして表示が義務化された7品目
えび・かに・卵・乳・小麦:症例数が多い原材料
そば・落花生:症状が重篤であり、生命に関わるため特に留意が必要な原材料
(2)表示を奨励(任意表示)
可能な限り表示することが推奨された20品目
あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉
くるみ・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも
やまいも・リンゴ・ゼラチン
(3)上記以外に食物アレルギーを起こすとされる原材料
米・オオムギ(大麦)・アワ(粟)・ヒエ(稗)・キビ(黍)・トウモロコシ・インゲン・エンドウ・アーモンド・ココナッツ・クリ(栗)・イチゴ・メロン・マンゴー・アボカド・セイヨウナシ・トマト・セロリ・パセリ・タマネギ・スイカ・ニンジン・ジャガイモ・サツマイモ・カボチャ・ホウレンソウ・タケノコ・ニンニク・カラシ・ワサビ・カカオ・アサリ・カキ・ホタテ・イカ・タコ・サバ・アジ・イワシ・タラ・サケ・マグロ・イクラ・タラコ
こうしてみると、実に多種多様な食品がアレルギーを引き起こすということに驚きますね。例えば(3)の「カカオ」と言えば来月のバレンタインデーの代表的な贈り物であるチョコレートの原料ですが、アレルギーのある方にとっては厄日となるわけです。
3.食物アレルギーによる死亡事故の事例
2012年12月東京都調布市立の小学校で、給食後に食物アレルギーのある5年生の女子生徒が死亡しました。原因はアレルギーによるアナフィラキシーショックとされています。
女子生徒は乳製品にアレルギーがありましたが、女子生徒がおかわりを求めた際に担任教諭は食べられない食材が記入された一覧表を確認しないまま、チーズ入りのチヂミを渡していました。
女子生徒が食後に気分が悪い旨を訴え、症状が悪化したため、校長が14分後に女児のもっていたエピペン(R)(アナフィラキシーの症状を和らげるアドレナリン自己注射製剤)を注射しました。その後、救急車で病院に搬送されましたが、女子生徒は心肺停止になり亡くなりました。
その女子生徒の母親によれば、その日に限って、普段おかわりをしない娘が給食のおかわりをしたのだそうです。そのクラスには割り当てられた給食全体をおかわりしながら残さず食べる目標がありましたが、チヂミは不人気で、おかわりする子が少なかったそうです。「なぜおかわりしたの」とお友達が聞くと、娘は「完食に貢献したかったから」と言ったそうです。常々、人の役に立ちたいと話し、将来は科学者になるのが夢だったそうです。
その母親は娘の事故を機に食物アレルギーに対し過剰な恐怖心が広がるのを懸念し、今後このような事故を起こさないためには、学校や栄養士にのみ責任を負わせようとするのではなく、食物アレルギーが特別なものではなく、身の回りに存在する普通の問題であるということに社会全体が理解を深め、あらゆる大人が子どもを見守るようになることが必要だと記されています。
4.食物アレルギーについての私見
アレルギーが起こる原因はまだ解明されていませんが、生活環境のほか、抗原に対する過剰な曝露、遺伝などが原因ではないかと考えられています。
アレルギーの原因の一つとして「衛生仮説」というのがあります。これは、環境が清潔すぎると、アレルギー疾患が増えるという仮説で、それを裏付けるように2004年にドイツを中心とする医科学チームの研究により乳幼児期におけるエンドトキシンの曝露量が、以後の花粉症やぜんそくの発症に密接に関係していることが明らかにされました。これは、乳幼児期の環境が清潔すぎると、アレルギー疾患の罹患率が高くなるという衛生仮説を裏付ける重要な報告とされています。
ここからはあくまでほとんど医学知識をほとんど持たない私の意見です。近年、私たちを取り巻く生活環境は極めて衛生的になりました。それはもちろん病気の原因が少なくなり良いことではありますが、あまりにそれが行き過ぎると、人間が潜在的に持っている環境適応能力を弱めることになってしまうのではないでしょうか。
年がばれるのを恐れずに言えば、まだ私が学校給食を食べていた30数年ほど前、給食で食物アレルギーが問題になっていた記憶は全くありません。問題はもっぱら給食の食べ残しの問題や、好き嫌いがある子どもへの教師の体罰の問題(給食を食べ残した児童を給食を全部食べるまで居残りさせるなど)ばかりだった記憶があります。子どもだからまだそんな医学の難しい話を聞いても理解できなかったかも知れませんし、医学もまだアレルギーのしくみについて今ほど明らかになっていなかったでしょうが、どう考えてみても食物アレルギーが問題になってきたのはやはりここ最近のことのように思えます。
私にはどうも環境仮説通り、環境が衛生的になるにつれ、世代が後になればなるほど、人類はアレルギーになりやすくなってきているのではないかと思えてならないのですが…。
おわりに
さて、今年から弊社では社内の委員会が再編され、ブログチームは「情報発信」という新たな名称に変わることになりました。それに伴ってメンバーも入れ替わりますので、私は「情報発信」のメンバーからは外れることになります。思えばブログ以前のメルマガの頃から今まで、長らく記事を書かせていただきましたが、最近はアイデアの枯渇のせいか、ぎりぎりでようやく書く内容が決まり、締切に追われて慌ただしく記事を書くことが多く、みなさんに満足していただけるような内容となっていなかったのではないかというのが心残りです。しかし、必ずや新メンバーが興味深い記事を書いてくれることでしょう。そういうわけでこの回をもちましてしばらくみなさんとはお別れしますが、またいつか記事を書く機会もあるかも知れません。その時はもっといい記事が書ければと思います。これまで拙い記事にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。それではまたの機会に。
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