こんにちはaiです。
秋の気配がだんだんと濃くなってきましたね。
今回は先月書けなかったaiのおすすめ本についてお送りします。
今回はほっこりする本をご紹介します。
以前このブログで「心温まる本」で紹介した山本甲士の本です。
うちのばあちゃんって一体何者?
スーパーおばあちゃんの素敵な日常の物語
『ひかりの魔女』
著者:山本甲士(ヤマモトコウシ)
発売:双葉社 (2014/3/19)
定価:本体 1,600円 + 税
判型:四六判
ISBN 978-4-575-23853-2
立ち読み→こちら
あらすじ
大学浪人生の真崎光一をはじめ、中学生の妹は夜に出歩いたり荒れた生活を送り、父親は会社の業績が悪くリストラされるかもしれない状態。母親はパートや家事に追われいつもイライラしていました。
そんな笑顔が消えた家庭に舞い込むおばあちゃんとの同居の話。
おばあちゃんと一緒に住んでいた伯父が亡くなり、この最悪な雰囲気の家庭が、おばあちゃんを引き取ることになるのです。
85歳のおばあちゃんとの暮らしが始まり、ボケるんじゃないか?と心配していた家族でしたが、足腰も丈夫で自分のことは自分でするなど元気いっぱいのおばあちゃん。
時々変なポーズをしていたり、炭火でごはんを炊いたりと、我が道を行くおばあちゃん。
そんな中、宅浪中の光一が始終家に居る為、おばあちゃんの外出にお供することになります。何年も前におばあちゃんが書道教室をしていた時の生徒に会うためでした。
そこで出会う元教え子たちのすさまじい慕いっぷりに光一は戸惑います。
おばあちゃんは一体何者?
もしかして宗教の教祖様とか?
ただの書道教室の先生をここまで慕い、年賀状を何十年も欠かさない関係とは一体なんなのでしょうか?
誰もが「おばあちゃんが一番気にかけているのは自分」と思ってしまう秘密は一体何なのでしょうか?
感想
浪人生の光一の目線で語られるおばあちゃんの凄さがおもしろいです。最初はおばあちゃんを穿って見ていた光一ですが、しだいに「おばあちゃん凄い!」に変わって行きます。
関わったひとがどんどん幸せになって行く不思議な力を持つおばあちゃん。その力は魔法のようにおいしいごはんを作る力だったり、人に好意的に見てもらえる力だったりします。
けれどもこのおばあちゃんは、なにも特別なことをしているわけではありません。おいしいごはんを作るため、米の研ぎ方一つとってもひと手間を疎かにしません。毎日真剣に変なポーズ(立禅)をして心身を鍛え、俊敏な動きを手に入れました。
生活の一つひとつを大切にしながら生きているだけで、誰にでもできることをきちんとこなしているだけなのです。真剣に生きるという毎日の積み重ねが、木の年輪のように太く丈夫に刻まれて行くんですね。そして気づいたらすごいことができるようになるんです。
さらにこのおばあちゃんは「言葉の魔法」を使う達人です。
「やさしい嘘」を効果的に使い、相手を上手く乗せてしまいます。
背筋もシャンとしているのに、バスに乗るときわざと腰を曲げて、上手に席を譲ってもらうしたたかさも持ち合わせています。その譲ってくれた相手と話し込み、バスを降りる頃には、譲ってくれた人が晴やかな気持ちになっています。
日本人が身に着けておきたい「たしなみ」をこのおばあちゃんは持っています。
シンプルで力強い日本の女性です。
こんなおばあちゃんにわたしもなりたいなと憧れます。
この話に出てくる、炭火で炊いたおにぎりと、イワシのぬかみそ炊き食べてみたいな~
わたしはいわゆる「いい話」が大嫌いなんですが、山本甲士の本は別でした。
この作家のにくい所は、わたしのようなひん曲がった性格の読者の心をほぐす術を心得ているというところでしょうか。ちょっとうまく行き過ぎなんじゃ・・・と思うところも多少はありつつも、その展開はやっぱり嬉しいんです。わかってて読んでるんですから。
本好きなら本を読んで絶望した経験があると思います。
面白い本を読んでいると、読み終えてしまうのが辛く、絶望に似た気持ちになります。
この楽しい世界がもう残り少ない。でも読み進めてしまう。このジレンマを何とかしてくれ~と。
この本も途中くらいから「ああ、どうか終わらないで欲しい」という気持ちで読みました。
秋の夜長、ミステリーもいいけれど、やさしい世界の本も一緒にいかがでしょうか。
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