こんにちはaiです。
梅雨なのにジトジトとデザインについてお話します。
私はDTPオペレータという仕事をしています。
お客様から預かったデータを元に,InDesignというソフトを使い,紙面を構成し編集をします。
この作業を組版(DTP作業)と呼びます。仕事内容は研究紀要や論文などの書籍類,PTA新聞,ポスター・チラシ,封筒や名刺の作成など幅広いです。原稿があり,見本があるものはサクサクと仕事できますが,新規のデザインやレイアウトの場合,「えーっと・・・」と悩んでしまうことがよくあります。
「デザインをする仕事」ってかっこいいですよね。
テレビドラマのデザイナーはおしゃれで,すぐに天才的なひらめきがあり,あざやかに仕事をこなすイメージで語られます。しかし実際のデザインの現場はというと,天才的なひらめきが天から降ってくるわけがなく,ひたすら調べものをしたり,色やフォントを見比べたり,本当にお客様の要望に添えているのかと悩むことばかり・・・地味で華やかさなどとは無縁の世界です。
■デザインが難しいわけ
デザインと論文の決定的な違いに,「デザインは答えが解らない」といった点があります。論文には判然とした組版ルールがあります。基本的に100年前の論文と今の論文と作りは同じです。過去の数ある論文をお手本にすれば,「こう組めばいい」という答えは見つかるのです。しかし,デザインにはコレといった「答え」が無いため,材料をもらって「さてどうしよう」と悩むのです。真っ白い紙にリンゴを描けと言われたら,人の数だけリンゴの絵ができるでしょう。リンゴ繋がりで携帯電話を描く人もいるだろうし,レコードを描く人もいるかもしれないのです。(?と思ったらアップルレコードで検索 )
■aiの失敗
巷にはかっこいいデザインの印刷物が溢れています。デザインの注文が来たら,他所で作られているかっこいい印刷物をものすごく意識してしまいます。「あのポスターのように今風のデザインにしたい。」お客様の為にという大義名分の下,ナルシシズムで自己中心的な欲が湧き上がってくるのです。そうなったらもう迷走するしかありません。自分がしたい表現に固執してしまい,お客様の伝えたい事を見逃してしまいます。この仕事に就いてデザインの仕事は始めから失敗の連続でした。お客様の意図と自分の意図がかみ合わないことがあります。お客様の要望にうまく答えられなかった自己中心的なデザイン案だからで,それらは当然ボツとなるのです。
■aiの失敗から得た教訓
ボツとなった屍の山から,いろいろな教訓を得ました。
調べまくるしかない
納期や様々な制限がある中で,お客様の伝えたいことを表現しなければならないのですが,少ない手がかりからヒントを見つける努力をしようと思います。原稿に出てきたキーワードを検索しまくり,似たような印刷物をひたすら見ようと思います。
かっこいいデザインにしたいと思ったら負けだ
一人よがりになっていないか,自己中心的なデザインになっていないか見直しながら仕事を進めようと思います。
真っ白の紙に描く勇気を持て
出来たデザインをけちょんけちょんに言われたらどうしよう。と思いながら制作しているのは私だけでは無いはずです。例え最初の一筆がダサくても,描かなければ何も始まりません。ダサいなりにも形になれば,そこから改善していくことができるんです。そのダサさを自分で理解できているのですから。マイナスから始まってもいいと思います。ずっと満点を取れる人なんていませんし,いつも満点の物に魅力はありません。(と開き直ることにしました)
「センスが無い」は言い訳
デザイン案が通らなかった時「私にはセンス・才能が無いからできなかった」という言い訳は言わないようにしています。なぜなら,仕事でデザインする事は,自分を表現する「芸術活動(アート)」とは基本的に違うからです。なぜだめなのかを冷静に分析しないといつまでたってもボツになり続け,次の仕事に活かせません。ボツになった時はセンス云々の問題ではなく,分析が間違っていた,方向性が間違っていたという根本的な問題であることが多いです。
説明(プレゼン)の重要性
デザイン案として校正に出す際,コンセプトやイメージを説明しなかったら自分の意図や真意が正しく伝わりません。「見たら全て解るようにデザインすればよい」中にはこういった意見もあるかもしれませんが,先程述べたように同じリンゴでも捉え方は人それぞれなので,自分の真意を完璧に伝えることなど無理に等しいのです。お客様に校正案を検討していただく時にご要望に添えたデザインになっているのか,比較検討するためにも,文章でのコンセプトイメージは役に立つと思うのです。
昔aiが美術科の学生だった頃,見ただけで思いが伝わる絵を描かなければダメだ。説明=言い訳ではないのか。言い訳で人を納得させるのはかっこ悪い。なんて思っていました(若気の至りです)。そんな中,絵を発表(プレゼン)し,評価し合う講評会が度々ありました。自分の描いた絵が相手にどう伝わるのかを知るためだったのだと思います。自分の思いとは全く違う捉え方をされることが普通でしたが,学生がしゃべればしゃべるだけ周りの理解と共感が深まります。ただ,その分ボロもよくでてきました。ボロが出た事を思い返せばつめが甘かったんだと今になって思います。
なぜこの色なのか?
誰に訴えているのか?
一番伝えたいものは何か?
このくらいの簡単な説明だけでも説得力は増しますし,言葉のイメージがあれば,紙面と言葉のイメージが一致しているかどうかもわかります。お客様の考えるイメージと違っていても,どうして欲しいという指示を出しやすいのではないかと思っています。
わからないのはお客様も一緒
お客様だってどんなデザインにすればよいのかわからないから注文してくださるのです。
この事実を肝に銘じ,ニシキプリントに出して良かったと言われるような仕事をしていきたいと思っています。
と,ここまで書いてきたことのほとんどが,版下におります古株のN西氏の受け売りです。N西氏世代が支えてきたものを次の世代である私たちが受け継ぐ時が,じわじわと迫っています。現在私たちはIT化され,完成された場所で仕事ができていますが,昔は紙とペンとカッターだけで仕事していたのです。コンピュータが無くても紙面を作ることができる技術は貴重で,その話をしぼりだして今後の仕事に役立てたいと思います。
最後にすごい人のすごい言葉で終わりたいと思います。
製品をデザインするのはとても難しい。
多くの場合,人は形にして見せてもらうまで,自分は何が欲しいのかわからないものだ
by スティーブ・ジョブズ
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