シンです。
先月、予想以上にアンドロイド・タブレット端末が使えるという記事を書きましたが、さらに大画面で快適に電子書籍を読みたいと思っていた矢先、iPad(初代)の中古が約20,000円と安かったのを見て、またまた衝動買いをしてしまいました。店頭で画面の大きさ、きれいさはYouTube動画の再生を店頭で確認しての購入でしたが、いざ自分で使い始めると様々な問題が見えてきました。
電子書籍のリーディング・デバイスへの期待
iPadと言えば、電子書籍専用端末であるアマゾンの「キンドル」と並んで、今日の電子書籍の普及を先導した画期的なデバイスであるというイメージを誰もがお持ちなのではないでしょうか。現在もそのことに大きな変わりはありませんが、今はさらにアンドロイド端末もそれに加わって三つどもえの争いという様相を呈しています。
電子書籍が爆発的に普及している欧米と違って、出版業態の違い等から電子書籍の普及が大幅に遅れている日本では、現状ではアマゾンや一部国内大手電機メーカーから数種出ている電子書籍専用端末はあまり魅力がないと言えるでしょう。それよりも他にインターネットやメールの閲覧等ができるという、いわば付加価値的機能が付いたiPadやアンドロイド・タブレットの方が魅力的なのではないでしょうか。
以前から電子書籍に大いに興味のあった私としては、iPadへの期待は並々ならぬものがあり、初代モデル、しかも中古であっても、今まで高額で手が出なかったiPadを購入できたのは大きな喜びでもあったのです。しかし、その期待はじきに失望へと変わることになりました。
クレジット番号まで入れないと無料のアプリすら手に入らないもどかしさ
iPadを使い始めて、まず驚いたのが、Appleが運営する、AppStoreと呼ばれるサイトから自分の好きなアプリをダウンロードするのに、メールアドレスは当然としても、クレジット番号まで登録しないと受け付けてくれないことです。これはアンドロイド端末がGoogleアカウントの作成(要するにGmailのアドレスの作成・登録)さえすれば、無料のアプリはいくらでもダウンロードできるのとは大きな違いです。Apple側は、全てのユーザーに均一かつ上質のサービスを提供するためには、課金可能なユーザー登録は不可欠とでも主張するのでしょうが、お金のない人は門前払いという、大企業のエゴが見え隠れする気がするのは私だけなのでしょうか。
私としては、過去にクレジット番号の流出の被害に遭っているだけに、なるべくならクレジットカード登録は避けたいと思っていましたが、これを登録しないことには何ひとつアプリをダウンロードできないので、やむなく登録しました。クレジットカードを登録する以外に、Appleが販売している、iTuneカードという1枚で最大10,000ポイント(販売価格は10,000円)相当の買い物ができるカードを購入し、それをオンラインで登録すればApple関連のStoreで決済ができるようになるようです。私も、カードの存在自体は知っていたものの、一体どこで売っているのか知りませんでしたが、先日ようやく大手家電量販店等で購入できるということを知った次第です。もっと早く知っていれば、とりあえず1,000円のカードを買って試せたのですが、後の祭りです。
自分の好きなファイルを転送すらできないもどかしさ
iPadの外観はシンプルそのものです。端末の厚みが薄くなり、液晶画面の解像度が大幅に改良された現行のモデルでもこれは同じことです。これはアンドロイド端末のほとんどがUSB端子やSDカードスロットなどを搭載しているため、けっこう外観がごちゃごちゃしているのとは好対照と言えるでしょう。唯一の接続端子は充電兼パソコンへのUSBケーブル接続用の端子のみです。しかし、これがパソコンへの接続用とは言いながら、そのまま接続しただけではデータのやりとりも何もできないという不可解な設計になっています。何故、パソコンに接続したら、共有フォルダくらい見えるようにしておかなかったのでしょうか。見えて困るようなことがあるとはどうしても思えないのですが…。
では一体どうやってデータをやり取りするのかと言えば、iTunesというAppleが無償で提供しているアプリを介してということなのですが、たしかiTunesというのは元々iPodで音楽のファイルをパソコンとやり取りするために作られたアプリだったはずで、それを機能拡張して画像や動画などを何とかやり取りできるようにしているに過ぎません。
そのせいか、このアプリは使い勝手が非常に悪く、私はこのアプリでは自分の好きな画像一つ思うように転送できません。こう感じているのは私だけではないようで、パソコンとiPadの間でファイルのやり取りをする有償・無償の様々なアプリが出ているようです。有料のものはまだ試していませんが、無料のものをいくつか試した限りで、満足の行くようなアプリはありませんでした。一見、転送できたかのように見えても、一体iPadのどこに転送されたのかが分からないのです。まるでiPadは中身が全く見えない、一昔前のコンピュータのような「ブラック・ボックス」のように感じるのは私だけではないはずです。これでは、自分が独自に入手したデータを他の媒体にバックアップすることすら、ままなりません。
Appleの運営するストア等(iBOOKSストア)で購入した電子書籍を、購入した端末自身で読んだりするには何の問題もありませんが、他の端末でダウンロードした電子書籍や、自炊で作成したPDF形式の電子書籍をiPadに取り込もうとすると、とたんに問題が発生し、どう解決したら良いのかさっぱりわからなくなります。最初に触った人でも容易に分かると言われるタッチパネル操作の容易さとは正反対のこのギャップがどうにも気になります。
無線LANがつながらないとほとんど何もできないもどかしさ
あと残された道はiCloudというオンラインのデータ保管サービスに登録し、自分がiPadに入れたいファイルをまずiCloud上にアップロードし、それをiPadでダウンロードする、という方法ですが、通常の無線LANの回線速度でこれをするには、ファイルの数と容量によっては大変な時間がかかってしまうことは容易に想像できることです。私もまだ試してはいませんが、仮に時間をかけて苦労してこれをやったとしても、結局iTunesの場合と同じくどこに入ったのか分からないことになりそうなので、試す気にもならないというのが本音です。
つまり、iPadというデバイスは、SDカード・リーダーを持たない(実はApple純正のカメラコネクションキットという別売りのSDカードリーダーがあるのですが、純正品は約3,000円と高額、他社の安価な類似製品は相性の問題でうまく機能しないものが多いようです。)ばかりに、無線LANが使えない環境ではほとんど何もできなくなってしまうという、致命的な欠陥を持っていると言っても過言ではない気がします。
ただ、無線LANがなくても使用できる機能もわずかながらあります。iPadに標準でインストールされているiBOOKSというアプリに内臓されている辞書で(一説には小○館の英和中辞典の辞書データが入っているということですが)、これが一部のiBOOKS以外の電子書籍リーダーのアプリからも参照できるので、無線LANがつながっていなくても(英文の)電子書籍を読むのには支障がありません。逆にアンドロイド・タブレットの電子書籍リーダーのほとんどは私が知る限りでは、辞書に対応していないか、対応していてもオンライン辞書を参照するものがほとんどなので、無線LANがつながっていないと辞書も機能しなくなり、この点ではiPadに軍配が上がります。
終わりに
結局、総合的に見て、私にはiPadはなじまないようです。先日、早速某国内メーカーの10.1インチのアンドロイド・タブレット端末を買い直しました。iPadは、上に挙げたような問題が解決しない限り、私には使いこなせそうにないため、中古市場ではまだそこそこの価値があるようなので、売るのもありかな、と思っています。
今回のレポートでは、iPadの欠点ばかりを並べてしまった感がありますが、これはiPad上で購入した以外の電子書籍への対応の問題であって、これ以外の用途では問題はないのかも知れません。あくまで特定の用途に限った問題なので、誤解のないように念を押しておきます。では、今回はこの辺で。
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